久しぶりのブログ更新です。
タイトルのちょっと変更しました。
今回は、
木造住宅の仕様規定を深く理解する その5 「耐力壁の配置バランス」の解説をします。
耐力壁の配置バランスとは、壁量計算にて耐力壁の必要な量(壁量)を計算した後に行う検討です。
壁量計算では単にX,Y方向の必要壁量と存在壁量の確認を行いましたが、
この耐力壁の配置バランスが悪いと壁量は確保していても地震力に対してて抵抗できないことがあります。
具体的には、建物のX,Y方向の耐力壁が偏って配置されていると、耐力壁の少ない通りなどが地震力に対して抵抗できず、建物がねじれるように倒壊することがあります。
これは、1995年阪神淡路大震災で木造住宅に多く見られた被害で、
特に商店街や住宅密集地の「間口が狭く奥行が大きい」建物に大きな被害が集中しました。
理由は、間口が狭いため、道路に接している間口方向には、
玄関や車庫、店舗などが配置され、
間口方向の耐力壁は建物奥の方へと偏ることになりました。
このような間取りは、耐力壁の少ない道路側の間口方向が大きくねじれるように倒壊します。
この被害状況を鑑み、2000年の建築基準法改正において木造住宅の仕様規定に「耐力壁の配置バランス」を検討する簡易的な計算方法として
「四分割法(よんぶんかつほう)」が提案されたのです。
耐力壁の配置バランス検討方法は、四分割法の他に、「偏心率の計算」でもOKです。
しかし、偏心率の計算はちょっと高度なため、
木造2階建て程度の四号建築物では、
四分割法による簡易計算を先ずは理解しましょう。
四分割法は、一見難しそうに感じますが、実はとても簡単な計算をしています。
なぜ難しそうに感じるのかと言うと、
わざわざ難しい言葉を使っているから難しい計算に感じるのです・・。
四分割法は、建物各階各方向の外側1/4の部分で、地震力に対する壁量計算をしているだけです。
手順は以下の通りです。
①1/4部分の床面積を求めます。
②求めた床面積に地震力に対する壁量計算で必要壁量を算出するときに利用した「床面積に乗する数値」を掛け算して必要壁量を求めます。
1/4部分の必要壁量=1/4部分の床面積×床面積に乗する数値
*1階で1/4部分の上に2階が全く載っていない場合は、
例え1階でも乗ずる数値は「平屋建て」の数値とします。
③1/4部分の存在壁量を求めます。
④判定その1 「壁量充足率のチェック」
壁量充足率=1/4部分の存在壁量÷1/4部分の必要壁量≦1.0
の確認
簡単に説明すると、必要壁量よりも存在壁量が多いことの確認です。
⑤判定その2 「壁率比のチェック」
同一階の同一方向(例えば、1階Y方向など)の向かい合った外側1/4部分の充足率の比較検討を行います。
例えば、1階Y方向の左右1/4部分の充足率を求め、
充足率の小さい方÷充足率の大きい方≧0.5 の確認をします。
簡単に説明すると、向かい合った1/4部分の壁量充足率の差が
大きすぎないかをチェックしているのです。
もっと具体的に計算例で説明すると、
1階Y方向の左側1/4の壁量充足率が3.5
1階Y方向の右側1/4の壁量充足率が1.2
この場合、どちらも充足率が1.0以上のため「判定その1」はOKです。
しかし、判定2の壁率比を比較してみると、
充足率の小さい方÷充足率の大きい方=1.2÷3.5=0.34≦0.5
NGとなります。
「判定その2」の意味を理解することが大切です。
判定その2でチェックしたいことは、向かい合った1/4部分の壁量充足率がたとえ満たされていたとしても、充足率に差がありすぎていては耐力壁の配置バランスとしては良いバランスとは言えないはず。
そこで、向かい合った1/4部分の壁量充足率の比率を「壁率比」として計算して、
充足率のバランスが1:2以内(壁率比0.5以上)であればバランスは悪くないでしょうという意味なのです。
そう考えると、実は「判定その2」がとても重要であることがわかります。
そこで、もう一つ考えてみましょう。
耐力壁の配置バランスの簡易計算である四分割法は、
なぜ建物外側1/4部分の壁量計算なのでしょう?
バランスの良い耐力壁配置なら建物中心部にバランスよく配置しても良いのではないでしょうか??
この答えは、偏心率の計算をすると理論が理解できるのですが、
構造計算はもっとイメージで理解することが大切です。
建物を自分自身の体に置き換えて考えてみましょう。
例えば、電車によるとき、電車の横揺れに抵抗するため足を開くと思います。
足を揃えるよりも開いた方が横揺れに対して安定します。
これと同じなのです。
建物も、建物中心部に耐力壁をバランスよく配置するより、建物外周部にバランスよく配置する方が地震による水平方向の力に抵抗できるのです。
だから外側1/4部分の耐力壁配置が重要なのです。
それともう一つ重要なことがあります。
四分割法の基本は、どんな形状の建物でも、
とにかく最も外側の部分から1/4の面積として計算しているようですが、
これも設計者として臨機応変に考えましょう。
例えば、大きなL型の建物は地震で揺れると入隅部分で建物が壊れることがあります。
これは、L型部分それぞれの揺れ方が違うことにより
入隅部分が壊れるのです。
そこで、建物形状がデコボコしているときは、建物を任意に矩形のブロックに分割し、それぞれの矩形ブロックごとに四分割法によるチェックを行います。
当然、壁量計算も各矩形ブロックで行い、壁量充足率の差を小さくしておきます。
*具体的には小さい方の壁量充足率÷大きい方の壁量充足率≧0.75
そうすると、各矩形ブロックの揺れ方の差が少なくなるため、入隅部分で建物が壊れる被害は減少します。
このように、簡易計算と思われている四分割法も、深く理解すると建物の耐震性能は格段に向上します。
四分割法も深く理解してしっかりと計算をしてみてください。
構造計算は難し理論を覚えようと頑張る前に、どのような力が作用し、
どのように変形し抵抗するのかをイメージすることが大切です。
そうすると構造計算は案外簡単に理解できてくるはずです・・。
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