今日、新潟は結構雪が降りました。
そこで雪と構造計算に関することを思い出しました・・。
子どものころ冬になると屋根の雪下ろしをしました。
雪が屋根に積もってくると次第に建具の動きが悪くなり、
そろそろ雪下ろしをするタイミングとなります。
この当たり前と思っていたことを、
構造設計者目線で考えてみます。
なぜ、建具は動きが悪くなるのか?
①雪が屋根に積もる
②雪の重みで建具上の梁がたわみ、鴨居や枠材を介して建具を圧迫する
これって、構造計算により積雪荷重を考慮して梁のたわみを設計していれば防げることです。
古い住宅でこのようなことが起こってしまうのは致し方ないとしても、比較的新しい住宅でこんなことがもし起きているとしたらそれは問題ありだと思います(条例等で定められている以上の積雪の場合は除きます)。
四号建築物でも、積雪量を考慮して横架材(梁等)のたわみ検討は行いましょう。
プレカット業者がやっているから大丈夫!
と安易に考えないでください。
プレカット業者の方も、サービスで構造計算はしませんよ。
(一般的には)
構造計算をして「頂きたい」のであれば、ちゃんと対価を支払いましょう。当たり前のことです。
(構造計算費用はサービスにしろ、だけど責任を持て は都合の良すぎる話です・・・)
仮にプレカット業者の方が、構造計算により横架材のたわみ検討をしているならば、「たわみの許容値」を確認しましょう。
詳細な説明は省略しますが、床梁のたわみ制限値は、スパンの1/300かつ2cm以内(グレー本等)で、構造計算ソフトの初期値も大体この制限値になっています。
ということは極端な話、スパン6mの床梁は2cmまでたわみを許容しています。または二次梁、三次梁のたわみ量加算もあり得ます。
構造計算ソフトでNGが出ていないから良いと安易に考えず、計算の「質」を確認することが大切です。
ちょっと横道にそれましたが、構造設計者じゃなくても、構造に関する知識を見に付け、構造的な視点で住宅を見てみると色々なことが見えてくるかもしれませんよ。
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2014年12月6日土曜日
2014年11月15日土曜日
京都 青蓮院青龍殿舞台見学会のご案内
ブログで何度か紹介をしています、京都 青蓮院青龍殿舞台の見学会を開催いたします。
今年10月より一般公開されている青蓮院青龍殿舞台、舞台の正式名称は護摩壇。
広さは約1,050㎡で清水寺の舞台の約4.6倍!
東山山頂に舞台はあり、京都市内を一望できます。
そして、舞台を下側から支えている「方杖トラス」と「平行弦トラス」はこの見学会でしか見ることができません。もちろん舞台の構造設計につての説明も行います。
ご参加お待ちしております。
日時:2014年12月8日(月) 14:00~15:30頃まで
場所:京都市山科区厨子奥花鳥町28
参加費:青蓮院青龍殿の拝観料1,000円が必要です。
*参加申し込み方法
参加希望の方は、参加者氏名、会社名、連絡先を下記メールにご連絡ください。
お申込みメール:info@ms-structure.co.jp
㈱M's構造設計 担当 佐藤 実
TEL025-226-8118
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そして、舞台を下側から支えている「方杖トラス」と「平行弦トラス」はこの見学会でしか見ることができません。もちろん舞台の構造設計につての説明も行います。
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2014年11月6日木曜日
「地盤女子」との対談
地盤工学会から選抜された「地盤女子」との対談記事が、新建ハウジング10月30日号に掲載されました。
地盤業界なのに「女子」、と甘く見てはいけません。
技術士、地盤品質判定士、工学博士とまさに本物の技術者!
知識も豊富で、僕が一番勉強になりました。
お堅いイメージの「地盤」について女性目線で、女性の優しい説明によって一般ユーザーや建築関係者に地盤の重要性を伝えていくことが彼女たちのミッションです。
これからタッグを組み、地盤の重要性を伝えていくための取り組みを行う約束をして対談は終了しました。
興味があれば新建ハウジング読んでみてください!
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2014年10月29日水曜日
青蓮院青龍殿舞台の構造計算について その2
青蓮院青龍殿舞台(護摩壇)が2014年10月ついに完成しました!
10月8日から一般公開しています。
舞台の広さは約1,050㎡で、清水寺の舞台の4.6倍!!
京都東山山頂に舞台はあるため、京都市内が一望できます。
また、舞台を支える方杖トラスは写真のようにダイナミック!
残念ながら普段は舞台下のトラスを見ることはできません・・。
舞台下のトラスを見たい方は㈱M's構造設計までご連絡ください。
トラス構造の説明をいたします。
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2014年9月9日火曜日
青蓮院青龍殿舞台の構造計算について その1
構造計算の解説シリーズではなく、今回は大規模木質構造の構造計算について。
今秋一般公開される、京都東山山頂の青蓮院青龍殿舞台の構造計算を行いました。
舞台の広さは、清水寺の舞台の約5倍(約1,050㎡)で「方杖トラス」と「平行弦トラス」で成り立っています。
建設地には既存のRC造展望施設があり、このRC造を取り壊さず新しい舞台を作ることが与えられたミッションでした・・。
既存RC造展望施設の長さは約13m、更に新規舞台の荷重は載せられない・・。こんな状況です。
そこで、既存RC造を全てお覆うように13m超の方杖トラス構造が法政大学 網野先生より提案されました。
当然バランスをとるために13m超の方杖トラスは基礎をはさみ反対側にも13m超の方杖トラスが必要で、全長約27mの方杖トラス案ができました・・。
「これ、どうやって構造計算するの??」僕の第一印象です。
正直、青蓮院門跡は聞いたことがなく、門跡寺院の意味すら知らず、この舞台の注目度も全く知りませんでした。
構造計算をするにあたり、ただ数値的な安全性を確認するのではなく、青蓮院の歴史等理解し、舞台の役割を考え、構造計算を行うことが重要であると考え(実は妻に言われ)青蓮院の勉強からスタートしました。
その建物の背景を考えることは構造設計者にとってとても大切なことだと思います。
そんなことでスタートした舞台の実施設計、どこから手を付けていよいのか考える日々・・。
先ずは、大まかな構造計画を立て、計算項目を挙げ、フローを考える・・。手探り状態。
それでも、方杖トラス架構案が網野先生より出ていたため、かなり助かりました。
また、本物件の総合設計である増田千次郎さんの木材の関する豊富な知識に助けられました。
そんなことで構造計算が何とか終了しました。
間もなく完成、とても楽しみです!
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舞台の広さは、清水寺の舞台の約5倍(約1,050㎡)で「方杖トラス」と「平行弦トラス」で成り立っています。
建設地には既存のRC造展望施設があり、このRC造を取り壊さず新しい舞台を作ることが与えられたミッションでした・・。
既存RC造展望施設の長さは約13m、更に新規舞台の荷重は載せられない・・。こんな状況です。
そこで、既存RC造を全てお覆うように13m超の方杖トラス構造が法政大学 網野先生より提案されました。
当然バランスをとるために13m超の方杖トラスは基礎をはさみ反対側にも13m超の方杖トラスが必要で、全長約27mの方杖トラス案ができました・・。
「これ、どうやって構造計算するの??」僕の第一印象です。
正直、青蓮院門跡は聞いたことがなく、門跡寺院の意味すら知らず、この舞台の注目度も全く知りませんでした。
構造計算をするにあたり、ただ数値的な安全性を確認するのではなく、青蓮院の歴史等理解し、舞台の役割を考え、構造計算を行うことが重要であると考え(実は妻に言われ)青蓮院の勉強からスタートしました。
その建物の背景を考えることは構造設計者にとってとても大切なことだと思います。
そんなことでスタートした舞台の実施設計、どこから手を付けていよいのか考える日々・・。
先ずは、大まかな構造計画を立て、計算項目を挙げ、フローを考える・・。手探り状態。
それでも、方杖トラス架構案が網野先生より出ていたため、かなり助かりました。
また、本物件の総合設計である増田千次郎さんの木材の関する豊富な知識に助けられました。
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2014年3月20日木曜日
「構造塾」新潟・長岡会場からのお知らせ
3月19日(水)の「構造塾」新潟・長岡会場の第4期講座を終了しました。
*予定しておりました、耐力壁の配置バランス「四分割法」、「偏心率」は後日UPします。
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構造塾を設立して4年、年間5回講座で合計20回目の講座でした。(写真UPします)
ここまで運営できたことは皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。
第5期の「構造塾」新潟・長岡会場は、...
・4月23日(水)に会員募集説明会を開催します。
(詳細は後程)
・5月より第5期の講座を開始します。
(詳細は後程)
講座内容を下記の通りより充実させます。
①構造講座は3講座(修了証発行)
・基本講座:木質構造の基礎知識、基本的な考え方
・応用講座:設計・施工に使える構造の知識習得と演習
・実践講座:構造計算ソフトを使った実践的な講座
(エキスパートコース)
②省エネ講座(修了証発行)
・改正省エネを基本に設計演習等
③特別講座
・地盤勉強会:会社、団体、グループ等にて開催
(構造塾会員外でもOK! 随時受付中)
・現場勉強会:地盤調査、プレカット工場、基礎配筋、構造躯体
・外部講師講座:大学教授、税理士、保険業者等
④会員交流
・納涼会、忘年会、新年会等
今後とも、「構造塾」をよろしくお願いいたします。
ここまで運営できたことは皆様のおかげです。
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(詳細は後程)
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(詳細は後程)
講座内容を下記の通りより充実させます。
①構造講座は3講座(修了証発行)
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②省エネ講座(修了証発行)
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2014年3月1日土曜日
木造住宅の仕様規定を深く理解する その5「耐力壁の配置バランス」
久しぶりのブログ更新です。
タイトルのちょっと変更しました。
今回は、
木造住宅の仕様規定を深く理解する その5 「耐力壁の配置バランス」の解説をします。
耐力壁の配置バランスとは、壁量計算にて耐力壁の必要な量(壁量)を計算した後に行う検討です。
壁量計算では単にX,Y方向の必要壁量と存在壁量の確認を行いましたが、
この耐力壁の配置バランスが悪いと壁量は確保していても地震力に対してて抵抗できないことがあります。
具体的には、建物のX,Y方向の耐力壁が偏って配置されていると、耐力壁の少ない通りなどが地震力に対して抵抗できず、建物がねじれるように倒壊することがあります。
これは、1995年阪神淡路大震災で木造住宅に多く見られた被害で、
特に商店街や住宅密集地の「間口が狭く奥行が大きい」建物に大きな被害が集中しました。
理由は、間口が狭いため、道路に接している間口方向には、
玄関や車庫、店舗などが配置され、
間口方向の耐力壁は建物奥の方へと偏ることになりました。
このような間取りは、耐力壁の少ない道路側の間口方向が大きくねじれるように倒壊します。
この被害状況を鑑み、2000年の建築基準法改正において木造住宅の仕様規定に「耐力壁の配置バランス」を検討する簡易的な計算方法として
「四分割法(よんぶんかつほう)」が提案されたのです。
耐力壁の配置バランス検討方法は、四分割法の他に、「偏心率の計算」でもOKです。
しかし、偏心率の計算はちょっと高度なため、
木造2階建て程度の四号建築物では、
四分割法による簡易計算を先ずは理解しましょう。
四分割法は、一見難しそうに感じますが、実はとても簡単な計算をしています。
なぜ難しそうに感じるのかと言うと、
わざわざ難しい言葉を使っているから難しい計算に感じるのです・・。
四分割法は、建物各階各方向の外側1/4の部分で、地震力に対する壁量計算をしているだけです。
手順は以下の通りです。
①1/4部分の床面積を求めます。
②求めた床面積に地震力に対する壁量計算で必要壁量を算出するときに利用した「床面積に乗する数値」を掛け算して必要壁量を求めます。
1/4部分の必要壁量=1/4部分の床面積×床面積に乗する数値
*1階で1/4部分の上に2階が全く載っていない場合は、
例え1階でも乗ずる数値は「平屋建て」の数値とします。
③1/4部分の存在壁量を求めます。
④判定その1 「壁量充足率のチェック」
壁量充足率=1/4部分の存在壁量÷1/4部分の必要壁量≦1.0
の確認
簡単に説明すると、必要壁量よりも存在壁量が多いことの確認です。
⑤判定その2 「壁率比のチェック」
同一階の同一方向(例えば、1階Y方向など)の向かい合った外側1/4部分の充足率の比較検討を行います。
例えば、1階Y方向の左右1/4部分の充足率を求め、
充足率の小さい方÷充足率の大きい方≧0.5 の確認をします。
簡単に説明すると、向かい合った1/4部分の壁量充足率の差が
大きすぎないかをチェックしているのです。
もっと具体的に計算例で説明すると、
1階Y方向の左側1/4の壁量充足率が3.5
1階Y方向の右側1/4の壁量充足率が1.2
この場合、どちらも充足率が1.0以上のため「判定その1」はOKです。
しかし、判定2の壁率比を比較してみると、
充足率の小さい方÷充足率の大きい方=1.2÷3.5=0.34≦0.5
NGとなります。
「判定その2」の意味を理解することが大切です。
判定その2でチェックしたいことは、向かい合った1/4部分の壁量充足率がたとえ満たされていたとしても、充足率に差がありすぎていては耐力壁の配置バランスとしては良いバランスとは言えないはず。
そこで、向かい合った1/4部分の壁量充足率の比率を「壁率比」として計算して、
充足率のバランスが1:2以内(壁率比0.5以上)であればバランスは悪くないでしょうという意味なのです。
そう考えると、実は「判定その2」がとても重要であることがわかります。
そこで、もう一つ考えてみましょう。
耐力壁の配置バランスの簡易計算である四分割法は、
なぜ建物外側1/4部分の壁量計算なのでしょう?
バランスの良い耐力壁配置なら建物中心部にバランスよく配置しても良いのではないでしょうか??
この答えは、偏心率の計算をすると理論が理解できるのですが、
構造計算はもっとイメージで理解することが大切です。
建物を自分自身の体に置き換えて考えてみましょう。
例えば、電車によるとき、電車の横揺れに抵抗するため足を開くと思います。
足を揃えるよりも開いた方が横揺れに対して安定します。
これと同じなのです。
建物も、建物中心部に耐力壁をバランスよく配置するより、建物外周部にバランスよく配置する方が地震による水平方向の力に抵抗できるのです。
だから外側1/4部分の耐力壁配置が重要なのです。
それともう一つ重要なことがあります。
四分割法の基本は、どんな形状の建物でも、
とにかく最も外側の部分から1/4の面積として計算しているようですが、
これも設計者として臨機応変に考えましょう。
例えば、大きなL型の建物は地震で揺れると入隅部分で建物が壊れることがあります。
これは、L型部分それぞれの揺れ方が違うことにより
入隅部分が壊れるのです。
そこで、建物形状がデコボコしているときは、建物を任意に矩形のブロックに分割し、それぞれの矩形ブロックごとに四分割法によるチェックを行います。
当然、壁量計算も各矩形ブロックで行い、壁量充足率の差を小さくしておきます。
*具体的には小さい方の壁量充足率÷大きい方の壁量充足率≧0.75
そうすると、各矩形ブロックの揺れ方の差が少なくなるため、入隅部分で建物が壊れる被害は減少します。
このように、簡易計算と思われている四分割法も、深く理解すると建物の耐震性能は格段に向上します。
四分割法も深く理解してしっかりと計算をしてみてください。
構造計算は難し理論を覚えようと頑張る前に、どのような力が作用し、
どのように変形し抵抗するのかをイメージすることが大切です。
そうすると構造計算は案外簡単に理解できてくるはずです・・。
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タイトルのちょっと変更しました。
今回は、
木造住宅の仕様規定を深く理解する その5 「耐力壁の配置バランス」の解説をします。
耐力壁の配置バランスとは、壁量計算にて耐力壁の必要な量(壁量)を計算した後に行う検討です。
壁量計算では単にX,Y方向の必要壁量と存在壁量の確認を行いましたが、
この耐力壁の配置バランスが悪いと壁量は確保していても地震力に対してて抵抗できないことがあります。
具体的には、建物のX,Y方向の耐力壁が偏って配置されていると、耐力壁の少ない通りなどが地震力に対して抵抗できず、建物がねじれるように倒壊することがあります。
これは、1995年阪神淡路大震災で木造住宅に多く見られた被害で、
特に商店街や住宅密集地の「間口が狭く奥行が大きい」建物に大きな被害が集中しました。
理由は、間口が狭いため、道路に接している間口方向には、
玄関や車庫、店舗などが配置され、
間口方向の耐力壁は建物奥の方へと偏ることになりました。
このような間取りは、耐力壁の少ない道路側の間口方向が大きくねじれるように倒壊します。
この被害状況を鑑み、2000年の建築基準法改正において木造住宅の仕様規定に「耐力壁の配置バランス」を検討する簡易的な計算方法として
「四分割法(よんぶんかつほう)」が提案されたのです。
耐力壁の配置バランス検討方法は、四分割法の他に、「偏心率の計算」でもOKです。
しかし、偏心率の計算はちょっと高度なため、
木造2階建て程度の四号建築物では、
四分割法による簡易計算を先ずは理解しましょう。
四分割法は、一見難しそうに感じますが、実はとても簡単な計算をしています。
なぜ難しそうに感じるのかと言うと、
わざわざ難しい言葉を使っているから難しい計算に感じるのです・・。
四分割法は、建物各階各方向の外側1/4の部分で、地震力に対する壁量計算をしているだけです。
手順は以下の通りです。
①1/4部分の床面積を求めます。
②求めた床面積に地震力に対する壁量計算で必要壁量を算出するときに利用した「床面積に乗する数値」を掛け算して必要壁量を求めます。
1/4部分の必要壁量=1/4部分の床面積×床面積に乗する数値
*1階で1/4部分の上に2階が全く載っていない場合は、
例え1階でも乗ずる数値は「平屋建て」の数値とします。
③1/4部分の存在壁量を求めます。
④判定その1 「壁量充足率のチェック」
壁量充足率=1/4部分の存在壁量÷1/4部分の必要壁量≦1.0
の確認
簡単に説明すると、必要壁量よりも存在壁量が多いことの確認です。
⑤判定その2 「壁率比のチェック」
同一階の同一方向(例えば、1階Y方向など)の向かい合った外側1/4部分の充足率の比較検討を行います。
例えば、1階Y方向の左右1/4部分の充足率を求め、
充足率の小さい方÷充足率の大きい方≧0.5 の確認をします。
簡単に説明すると、向かい合った1/4部分の壁量充足率の差が
大きすぎないかをチェックしているのです。
もっと具体的に計算例で説明すると、
1階Y方向の左側1/4の壁量充足率が3.5
1階Y方向の右側1/4の壁量充足率が1.2
この場合、どちらも充足率が1.0以上のため「判定その1」はOKです。
しかし、判定2の壁率比を比較してみると、
充足率の小さい方÷充足率の大きい方=1.2÷3.5=0.34≦0.5
NGとなります。
「判定その2」の意味を理解することが大切です。
判定その2でチェックしたいことは、向かい合った1/4部分の壁量充足率がたとえ満たされていたとしても、充足率に差がありすぎていては耐力壁の配置バランスとしては良いバランスとは言えないはず。
そこで、向かい合った1/4部分の壁量充足率の比率を「壁率比」として計算して、
充足率のバランスが1:2以内(壁率比0.5以上)であればバランスは悪くないでしょうという意味なのです。
そう考えると、実は「判定その2」がとても重要であることがわかります。
そこで、もう一つ考えてみましょう。
耐力壁の配置バランスの簡易計算である四分割法は、
なぜ建物外側1/4部分の壁量計算なのでしょう?
バランスの良い耐力壁配置なら建物中心部にバランスよく配置しても良いのではないでしょうか??
この答えは、偏心率の計算をすると理論が理解できるのですが、
構造計算はもっとイメージで理解することが大切です。
建物を自分自身の体に置き換えて考えてみましょう。
例えば、電車によるとき、電車の横揺れに抵抗するため足を開くと思います。
足を揃えるよりも開いた方が横揺れに対して安定します。
これと同じなのです。
建物も、建物中心部に耐力壁をバランスよく配置するより、建物外周部にバランスよく配置する方が地震による水平方向の力に抵抗できるのです。
だから外側1/4部分の耐力壁配置が重要なのです。
それともう一つ重要なことがあります。
四分割法の基本は、どんな形状の建物でも、
とにかく最も外側の部分から1/4の面積として計算しているようですが、
これも設計者として臨機応変に考えましょう。
例えば、大きなL型の建物は地震で揺れると入隅部分で建物が壊れることがあります。
これは、L型部分それぞれの揺れ方が違うことにより
入隅部分が壊れるのです。
そこで、建物形状がデコボコしているときは、建物を任意に矩形のブロックに分割し、それぞれの矩形ブロックごとに四分割法によるチェックを行います。
当然、壁量計算も各矩形ブロックで行い、壁量充足率の差を小さくしておきます。
*具体的には小さい方の壁量充足率÷大きい方の壁量充足率≧0.75
そうすると、各矩形ブロックの揺れ方の差が少なくなるため、入隅部分で建物が壊れる被害は減少します。
このように、簡易計算と思われている四分割法も、深く理解すると建物の耐震性能は格段に向上します。
四分割法も深く理解してしっかりと計算をしてみてください。
構造計算は難し理論を覚えようと頑張る前に、どのような力が作用し、
どのように変形し抵抗するのかをイメージすることが大切です。
そうすると構造計算は案外簡単に理解できてくるはずです・・。
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2014年2月1日土曜日
木造住宅の壁量計算を深く理解する その4「壁量計算による耐震等級」
今回は木造2階建て住宅(四号建築物)の仕様規定における、令46条壁量計算の解説第4弾、「壁量計算による耐震等級」です。
耐震等級とは
耐震等級とは、構造計算による地震力に対する安全性の程度を等級として表したもので、2000年施行の品確法の性能表示制度で一般化してきました。
耐震等級1とは建築基準法で求める耐震性能
耐震等級2とは建築基準法で求める耐震性能の1.25倍の耐震性能
耐震等級3とは建築基準法で求める耐震性能の1.50倍の耐震性能
ここまで知っている方は多いのではないでしょうか。
では、1.25倍、1.50倍の耐震性能とは具体的に何か??
ここが意外と知られていません。
令46条壁量計算で例えると、
前回までに解説してきた地震力、風圧力による必要壁量は建築基準法で求める耐震性能で、壁量計算がOK(必要壁量≦存在壁量)となる四号建築物は、「耐震等級1」と言えます。
耐震等級2とは、必要壁量が1.25倍になることで、
耐震等級3とは、必要壁量が1.50倍になることです。
この、必要壁量の1.25倍≦存在壁量ならば、耐震等級2
必要壁量の1.50倍≦存在壁量ならば、耐震等級3
の四号建築物と言えるのです。
壁量充足率で耐震等級を確認している
前回、精度の高い壁量方法として壁量充足率を解説しました。
おさらいです。
壁量充足率=存在壁量/必要壁量 で計算します。
壁量充足率を算出することで、各階各方向の壁量がどれだけ足りているか、余裕があるのかを確認できました。
実はこの壁量充足率を算出することで、耐震等級の確認をしていたのです。
必要壁量の1.25倍≦存在壁量ならば、耐震等級2とは、
壁量充足率が1.25倍以上のことで、
必要壁量の1.50倍≦存在壁量ならば、耐震等級3とは、
壁量充足率が1.50倍以上のことなのです。
はじめはちょっと混乱するかもしれませんが、頭を整理して考えてみてください。すぐに理解できると思います。
耐震等級を確認してみよう!
では、実際に耐震等級の確認をしてみましょう。
前回計算した壁量充足率は以下の通りです。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
耐震等級は、
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
→充足率1.075は耐震等級1
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
→充足率1.666は耐震等級3
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
→充足率1.615は耐震等級3
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
→充足率2.000は耐震等級3
となります。
残念なことに、1階X方向が充足率1.075で耐震等級1なので、建物全体で評価すると耐震等級1の建物となります。
1階X方向の存在壁量を増やし、充足率を1.5以上とすれば、建物全体の評価で耐震等級3となります。
戦略的な壁量計算書
壁量計算は実に地味な計算で、お客様に説明することがなかったり、説明しても当たり前の検討をしているだけと思われる可能性もあります。
ただ、地震に対して安全性を確認している安心感は伝わはずですが・・・。
そこで、この地味な壁量計算をもっと戦略的に使っていきましょう!
そこで使えるのが「耐震等級」です。
耐震等級を知っているお客様は思った以上に多くいます。
細かな意味は分からなくても、「耐震等級3は耐震性能が高い安全な住宅」という認識を持っています。
あるアンケートによれば、住宅予算が高い人ほど高い耐震性能を求める傾向があります。
(日経ホームビルダー2013年2月号参照)
であれば、お客様の要望に応えるべく、耐震等級3が設計できることをHPなのでどんどんPRしましょう!
今や、住宅を建てようと考えている人の多くは、インターネットで工務店や設計事務所などを検索する時代です。
「耐震等級3の家を建ててほしい」というお客様が来たら対応します、なんてことを言っていてもお客様はまず来ません。
だって、インターネットで、「木造住宅」、「耐震等級3」、「〇〇県〇〇市」、「工務店」との検索にヒットする可能性が極めて低いからです。
現在、多くのハウスメーカー、ビルダーはお客様に対して「耐震等級3」を伝えています。何故なら、多くの工務店が耐震等級3に対応できていないことを知っているからです。
だからこそ、PRが必要なのです。
構造検討方法による耐震等級のレベルを理解する
2013年11月22日のブログで、木造住宅の構造検討方法3通りを説明しました。
①許容応力度計算(構造計算)
②性能表示の耐震性能計算
③仕様規定
の3通りです。
これら検討方法には構造安全性に対するレベル差があります。
①許容応力度計算が最も構造安全性レベルの高い検討方法です。
そこで、知っておくべきことは、今回説明した耐震等級の計算方法は、③仕様規定による令46条壁量計算の方法の「耐震等級」であることです。
構造安全性レベルで言えば、最も低いレベルです。
このことを理解して耐震等級3(2でも構いません)をPRしてください。
最後に
「木造住宅の壁量計算を深く理解する」シリーズは今回で終了します。
結構甘く見られている壁量計算も深く理解し戦略的に使えば立派な強みとなります。
これが構造に強い会社、構造に強い設計者だと思います。
最近は「構造計算ソフトの使い手」が増えてきました。
構造計算の基本が全く分かっていないけど、構造計算ソフトは入力できて、
エラーは何となく解消できてしまい、構造計算書をコピーできる人です。
このブログを読んで頂いている方々は「構造計算ソフトの使い手」にはならないことを願っています。
次回は、耐力壁の配置バランス「四分割法」、「偏心率」を解説します。
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耐震等級とは
耐震等級とは、構造計算による地震力に対する安全性の程度を等級として表したもので、2000年施行の品確法の性能表示制度で一般化してきました。
耐震等級1とは建築基準法で求める耐震性能
耐震等級2とは建築基準法で求める耐震性能の1.25倍の耐震性能
耐震等級3とは建築基準法で求める耐震性能の1.50倍の耐震性能
ここまで知っている方は多いのではないでしょうか。
では、1.25倍、1.50倍の耐震性能とは具体的に何か??
ここが意外と知られていません。
令46条壁量計算で例えると、
前回までに解説してきた地震力、風圧力による必要壁量は建築基準法で求める耐震性能で、壁量計算がOK(必要壁量≦存在壁量)となる四号建築物は、「耐震等級1」と言えます。
耐震等級2とは、必要壁量が1.25倍になることで、
耐震等級3とは、必要壁量が1.50倍になることです。
この、必要壁量の1.25倍≦存在壁量ならば、耐震等級2
必要壁量の1.50倍≦存在壁量ならば、耐震等級3
の四号建築物と言えるのです。
壁量充足率で耐震等級を確認している
前回、精度の高い壁量方法として壁量充足率を解説しました。
おさらいです。
壁量充足率=存在壁量/必要壁量 で計算します。
壁量充足率を算出することで、各階各方向の壁量がどれだけ足りているか、余裕があるのかを確認できました。
実はこの壁量充足率を算出することで、耐震等級の確認をしていたのです。
必要壁量の1.25倍≦存在壁量ならば、耐震等級2とは、
壁量充足率が1.25倍以上のことで、
必要壁量の1.50倍≦存在壁量ならば、耐震等級3とは、
壁量充足率が1.50倍以上のことなのです。
はじめはちょっと混乱するかもしれませんが、頭を整理して考えてみてください。すぐに理解できると思います。
耐震等級を確認してみよう!
では、実際に耐震等級の確認をしてみましょう。
前回計算した壁量充足率は以下の通りです。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
耐震等級は、
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
→充足率1.075は耐震等級1
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
→充足率1.666は耐震等級3
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
→充足率1.615は耐震等級3
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
→充足率2.000は耐震等級3
となります。
残念なことに、1階X方向が充足率1.075で耐震等級1なので、建物全体で評価すると耐震等級1の建物となります。
1階X方向の存在壁量を増やし、充足率を1.5以上とすれば、建物全体の評価で耐震等級3となります。
戦略的な壁量計算書
壁量計算は実に地味な計算で、お客様に説明することがなかったり、説明しても当たり前の検討をしているだけと思われる可能性もあります。
ただ、地震に対して安全性を確認している安心感は伝わはずですが・・・。
そこで、この地味な壁量計算をもっと戦略的に使っていきましょう!
そこで使えるのが「耐震等級」です。
耐震等級を知っているお客様は思った以上に多くいます。
細かな意味は分からなくても、「耐震等級3は耐震性能が高い安全な住宅」という認識を持っています。
あるアンケートによれば、住宅予算が高い人ほど高い耐震性能を求める傾向があります。
(日経ホームビルダー2013年2月号参照)
であれば、お客様の要望に応えるべく、耐震等級3が設計できることをHPなのでどんどんPRしましょう!
今や、住宅を建てようと考えている人の多くは、インターネットで工務店や設計事務所などを検索する時代です。
「耐震等級3の家を建ててほしい」というお客様が来たら対応します、なんてことを言っていてもお客様はまず来ません。
だって、インターネットで、「木造住宅」、「耐震等級3」、「〇〇県〇〇市」、「工務店」との検索にヒットする可能性が極めて低いからです。
現在、多くのハウスメーカー、ビルダーはお客様に対して「耐震等級3」を伝えています。何故なら、多くの工務店が耐震等級3に対応できていないことを知っているからです。
だからこそ、PRが必要なのです。
構造検討方法による耐震等級のレベルを理解する
2013年11月22日のブログで、木造住宅の構造検討方法3通りを説明しました。
①許容応力度計算(構造計算)
②性能表示の耐震性能計算
③仕様規定
の3通りです。
これら検討方法には構造安全性に対するレベル差があります。
①許容応力度計算が最も構造安全性レベルの高い検討方法です。
そこで、知っておくべきことは、今回説明した耐震等級の計算方法は、③仕様規定による令46条壁量計算の方法の「耐震等級」であることです。
構造安全性レベルで言えば、最も低いレベルです。
このことを理解して耐震等級3(2でも構いません)をPRしてください。
最後に
「木造住宅の壁量計算を深く理解する」シリーズは今回で終了します。
結構甘く見られている壁量計算も深く理解し戦略的に使えば立派な強みとなります。
これが構造に強い会社、構造に強い設計者だと思います。
最近は「構造計算ソフトの使い手」が増えてきました。
構造計算の基本が全く分かっていないけど、構造計算ソフトは入力できて、
エラーは何となく解消できてしまい、構造計算書をコピーできる人です。
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次回は、耐力壁の配置バランス「四分割法」、「偏心率」を解説します。
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2014年1月15日水曜日
木造住宅の壁量計算を深く理解する その3「存在壁量の算出と壁量の判定」
今回は木造2階建て住宅(四号建築物)の仕様規定における、令46条壁量計算の解説第3弾、「存在壁量の算出と壁量の判定」です。
存在壁量の算出
前回までは、地震力に対する必要壁量と風圧力に対する「必要壁量」の算出について解説しました。壁量計算は、「必要壁量」に対して、「存在壁量」が多いことを確認して終了となります。
では、存在壁量とはなんでしょう?
存在壁量とは壁量計算をしている四号建築物に設計上配置する(存在する)耐力壁の量です。
壁量=壁倍率×耐力壁長さ(単位:m、cmなど)
必要壁量を算出した各階、各方向ごとの壁量の合計が「存在壁量」となります。
例えば、1階X方向に、
壁倍率2.0倍、長さ0.91mの耐力壁が5枚、
壁倍率4.0倍、長さ1.82mの耐力壁が3枚あるとすると存在壁量は、
壁倍率2.0倍×0.91m×5枚=9.10m
壁倍率4.0倍×1.82m×2枚=14.56m
1階X方向の存在壁量=9.10m+14.56m=23.66m となります。
壁量の判定
壁量計算の最後は、壁量の判定です。
壁量の判定は、
「必要壁量≦存在壁量」 の確認です。
例えば、1階X方向の必要壁量が22.00mだとすると、
壁量の判定 必要壁量22.00m<存在壁量23.66m OK
一般的な壁量計算はこれで終了です。
精度の高い壁量計算①
ここからは、壁量計算の精度を上げるための判定方法を紹介します。
例えば、
1階X方向 必要壁量22.00m<存在壁量23.66m OK
1階Y方向 必要壁量15.00m<存在壁量25.00m OK
2階X方向 必要壁量13.00m<存在壁量21.00m OK
2階Y方向 必要壁量10.00m<存在壁量20.00m OK
上記の壁量判定はすべてOKです。
ここで重要なことは、各階各方向の壁量がどの程度余裕があるのかを確認することです。
そこで、充足率(どの程度余裕があるのか)を確認します。
壁量充足率=存在壁量/必要壁量 で計算します。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
この充足率で、1階X方向の充足率はギリギリ壁量が足りていることがわかります。
それに比べ、1階Y方向は必要壁量に対して存在壁量が約1.6倍以上の余裕があることがわかります。
地震力や風圧力などの水平力は壁量計算のようにX方向、Y方向に都合よく作用しません。
様々な方向から作用します。
ということは、各階で方向ごとの壁量充足率に差がありすぎると、建築物に斜め方向から作用した水平力に対して抵抗力に差が生じます。
簡単に言い換えると、建築物の揺れ方や変形の具合に差が出てしまうのです。
そこで、各階の壁量充足率はなるべく近い数値にしておくことがお勧めです。
どの程度近い数値かという指標はありませんが、
壁の配置バランスの簡易計算である四分割法の壁率比の考え方を用いれば、
壁量充足率の小さい方/壁量充足率の大きい方≧0.5
が良いのではないでしょうか。
この式の意味は、充足率の小さい方と大きい方の比率を1:2以内に収めましょう、それ以上の差があるとバランスが悪いということです。
そこで、1階X,Y方向のバランスをチェックします。
壁量充足率の小さい方/壁量充足率の大きい方
1.075/1.666=0.645>0.5 OK
こんな感じです。
精度の高い壁量計算②
もう一つ、精度の高い壁量計算を紹介します。
次は、上下階のバランスです。
これは構造計算で行う「剛性率」と同じような考え方です。
剛性率は簡単に説明すると、各階の水平力に対する変形の差を確認する計算で、各階の変形の差が大きいと、変形の大きな階が水平力により倒壊してしまう可能性があるため、これを防ぐために剛性率は重要な計算なのです。
そこで、壁量計算にものこ剛性率の考えを取り入れます。
今度は、各階の同一方向の壁量充足率のバランスを取ります。
具体的には、
同一方向充足率の小さい階/同一方向充足率の大きい階≧0.6
を計算します。
計算してみましょう。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
X方向下階バランスチェック
1階X方向充足率1.075/2階X方向 充足率1.615=0.665 OK
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
Y方向上下階バランスチェック
1階Y方向充足率1.666/2階Y方向充足率2.000=0.833 OK
どちらの方向も上下階のバランスは良いことがわかります。
今回紹介した精度の高い壁量計算①、②は僕が著書である「最高に楽しい木構造入門」で勝手に提案している方法です。
建築基準法などで決まっている方法ではありません。
しかし、簡素な壁量計算の精度が高くなると思います。
設計者判断で利用してください。
次回は、壁量計算の最後、「壁量計算による耐震等級」について解説します。
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存在壁量の算出
前回までは、地震力に対する必要壁量と風圧力に対する「必要壁量」の算出について解説しました。壁量計算は、「必要壁量」に対して、「存在壁量」が多いことを確認して終了となります。
では、存在壁量とはなんでしょう?
存在壁量とは壁量計算をしている四号建築物に設計上配置する(存在する)耐力壁の量です。
壁量=壁倍率×耐力壁長さ(単位:m、cmなど)
必要壁量を算出した各階、各方向ごとの壁量の合計が「存在壁量」となります。
例えば、1階X方向に、
壁倍率2.0倍、長さ0.91mの耐力壁が5枚、
壁倍率4.0倍、長さ1.82mの耐力壁が3枚あるとすると存在壁量は、
壁倍率2.0倍×0.91m×5枚=9.10m
壁倍率4.0倍×1.82m×2枚=14.56m
1階X方向の存在壁量=9.10m+14.56m=23.66m となります。
壁量の判定
壁量計算の最後は、壁量の判定です。
壁量の判定は、
「必要壁量≦存在壁量」 の確認です。
例えば、1階X方向の必要壁量が22.00mだとすると、
壁量の判定 必要壁量22.00m<存在壁量23.66m OK
一般的な壁量計算はこれで終了です。
精度の高い壁量計算①
ここからは、壁量計算の精度を上げるための判定方法を紹介します。
例えば、
1階X方向 必要壁量22.00m<存在壁量23.66m OK
1階Y方向 必要壁量15.00m<存在壁量25.00m OK
2階X方向 必要壁量13.00m<存在壁量21.00m OK
2階Y方向 必要壁量10.00m<存在壁量20.00m OK
上記の壁量判定はすべてOKです。
ここで重要なことは、各階各方向の壁量がどの程度余裕があるのかを確認することです。
そこで、充足率(どの程度余裕があるのか)を確認します。
壁量充足率=存在壁量/必要壁量 で計算します。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
この充足率で、1階X方向の充足率はギリギリ壁量が足りていることがわかります。
それに比べ、1階Y方向は必要壁量に対して存在壁量が約1.6倍以上の余裕があることがわかります。
地震力や風圧力などの水平力は壁量計算のようにX方向、Y方向に都合よく作用しません。
様々な方向から作用します。
ということは、各階で方向ごとの壁量充足率に差がありすぎると、建築物に斜め方向から作用した水平力に対して抵抗力に差が生じます。
簡単に言い換えると、建築物の揺れ方や変形の具合に差が出てしまうのです。
そこで、各階の壁量充足率はなるべく近い数値にしておくことがお勧めです。
どの程度近い数値かという指標はありませんが、
壁の配置バランスの簡易計算である四分割法の壁率比の考え方を用いれば、
壁量充足率の小さい方/壁量充足率の大きい方≧0.5
が良いのではないでしょうか。
この式の意味は、充足率の小さい方と大きい方の比率を1:2以内に収めましょう、それ以上の差があるとバランスが悪いということです。
そこで、1階X,Y方向のバランスをチェックします。
壁量充足率の小さい方/壁量充足率の大きい方
1.075/1.666=0.645>0.5 OK
こんな感じです。
精度の高い壁量計算②
もう一つ、精度の高い壁量計算を紹介します。
次は、上下階のバランスです。
これは構造計算で行う「剛性率」と同じような考え方です。
剛性率は簡単に説明すると、各階の水平力に対する変形の差を確認する計算で、各階の変形の差が大きいと、変形の大きな階が水平力により倒壊してしまう可能性があるため、これを防ぐために剛性率は重要な計算なのです。
そこで、壁量計算にものこ剛性率の考えを取り入れます。
今度は、各階の同一方向の壁量充足率のバランスを取ります。
具体的には、
同一方向充足率の小さい階/同一方向充足率の大きい階≧0.6
を計算します。
計算してみましょう。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
X方向下階バランスチェック
1階X方向充足率1.075/2階X方向 充足率1.615=0.665 OK
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
Y方向上下階バランスチェック
1階Y方向充足率1.666/2階Y方向充足率2.000=0.833 OK
どちらの方向も上下階のバランスは良いことがわかります。
今回紹介した精度の高い壁量計算①、②は僕が著書である「最高に楽しい木構造入門」で勝手に提案している方法です。
建築基準法などで決まっている方法ではありません。
しかし、簡素な壁量計算の精度が高くなると思います。
設計者判断で利用してください。
次回は、壁量計算の最後、「壁量計算による耐震等級」について解説します。
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