今回は木造2階建て住宅(四号建築物)の仕様規定における、令46条壁量計算の解説第4弾、「壁量計算による耐震等級」です。
耐震等級とは
耐震等級とは、構造計算による地震力に対する安全性の程度を等級として表したもので、2000年施行の品確法の性能表示制度で一般化してきました。
耐震等級1とは建築基準法で求める耐震性能
耐震等級2とは建築基準法で求める耐震性能の1.25倍の耐震性能
耐震等級3とは建築基準法で求める耐震性能の1.50倍の耐震性能
ここまで知っている方は多いのではないでしょうか。
では、1.25倍、1.50倍の耐震性能とは具体的に何か??
ここが意外と知られていません。
令46条壁量計算で例えると、
前回までに解説してきた地震力、風圧力による必要壁量は建築基準法で求める耐震性能で、壁量計算がOK(必要壁量≦存在壁量)となる四号建築物は、「耐震等級1」と言えます。
耐震等級2とは、必要壁量が1.25倍になることで、
耐震等級3とは、必要壁量が1.50倍になることです。
この、必要壁量の1.25倍≦存在壁量ならば、耐震等級2
必要壁量の1.50倍≦存在壁量ならば、耐震等級3
の四号建築物と言えるのです。
壁量充足率で耐震等級を確認している
前回、精度の高い壁量方法として壁量充足率を解説しました。
おさらいです。
壁量充足率=存在壁量/必要壁量 で計算します。
壁量充足率を算出することで、各階各方向の壁量がどれだけ足りているか、余裕があるのかを確認できました。
実はこの壁量充足率を算出することで、耐震等級の確認をしていたのです。
必要壁量の1.25倍≦存在壁量ならば、耐震等級2とは、
壁量充足率が1.25倍以上のことで、
必要壁量の1.50倍≦存在壁量ならば、耐震等級3とは、
壁量充足率が1.50倍以上のことなのです。
はじめはちょっと混乱するかもしれませんが、頭を整理して考えてみてください。すぐに理解できると思います。
耐震等級を確認してみよう!
では、実際に耐震等級の確認をしてみましょう。
前回計算した壁量充足率は以下の通りです。
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
耐震等級は、
1階X方向 充足率=存在壁量23.66m/必要壁量22.00m=1.075
→充足率1.075は耐震等級1
1階Y方向 充足率=存在壁量25.00m/必要壁量15.00m=1.666
→充足率1.666は耐震等級3
2階X方向 充足率=存在壁量21.00m/必要壁量13.00m=1.615
→充足率1.615は耐震等級3
2階Y方向 充足率=存在壁量20.00m/必要壁量10.00m=2.000
→充足率2.000は耐震等級3
となります。
残念なことに、1階X方向が充足率1.075で耐震等級1なので、建物全体で評価すると耐震等級1の建物となります。
1階X方向の存在壁量を増やし、充足率を1.5以上とすれば、建物全体の評価で耐震等級3となります。
戦略的な壁量計算書
壁量計算は実に地味な計算で、お客様に説明することがなかったり、説明しても当たり前の検討をしているだけと思われる可能性もあります。
ただ、地震に対して安全性を確認している安心感は伝わはずですが・・・。
そこで、この地味な壁量計算をもっと戦略的に使っていきましょう!
そこで使えるのが「耐震等級」です。
耐震等級を知っているお客様は思った以上に多くいます。
細かな意味は分からなくても、「耐震等級3は耐震性能が高い安全な住宅」という認識を持っています。
あるアンケートによれば、住宅予算が高い人ほど高い耐震性能を求める傾向があります。
(日経ホームビルダー2013年2月号参照)
であれば、お客様の要望に応えるべく、耐震等級3が設計できることをHPなのでどんどんPRしましょう!
今や、住宅を建てようと考えている人の多くは、インターネットで工務店や設計事務所などを検索する時代です。
「耐震等級3の家を建ててほしい」というお客様が来たら対応します、なんてことを言っていてもお客様はまず来ません。
だって、インターネットで、「木造住宅」、「耐震等級3」、「〇〇県〇〇市」、「工務店」との検索にヒットする可能性が極めて低いからです。
現在、多くのハウスメーカー、ビルダーはお客様に対して「耐震等級3」を伝えています。何故なら、多くの工務店が耐震等級3に対応できていないことを知っているからです。
だからこそ、PRが必要なのです。
構造検討方法による耐震等級のレベルを理解する
2013年11月22日のブログで、木造住宅の構造検討方法3通りを説明しました。
①許容応力度計算(構造計算)
②性能表示の耐震性能計算
③仕様規定
の3通りです。
これら検討方法には構造安全性に対するレベル差があります。
①許容応力度計算が最も構造安全性レベルの高い検討方法です。
そこで、知っておくべきことは、今回説明した耐震等級の計算方法は、③仕様規定による令46条壁量計算の方法の「耐震等級」であることです。
構造安全性レベルで言えば、最も低いレベルです。
このことを理解して耐震等級3(2でも構いません)をPRしてください。
最後に
「木造住宅の壁量計算を深く理解する」シリーズは今回で終了します。
結構甘く見られている壁量計算も深く理解し戦略的に使えば立派な強みとなります。
これが構造に強い会社、構造に強い設計者だと思います。
最近は「構造計算ソフトの使い手」が増えてきました。
構造計算の基本が全く分かっていないけど、構造計算ソフトは入力できて、
エラーは何となく解消できてしまい、構造計算書をコピーできる人です。
このブログを読んで頂いている方々は「構造計算ソフトの使い手」にはならないことを願っています。
次回は、耐力壁の配置バランス「四分割法」、「偏心率」を解説します。
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